“電子音楽って何?”を、
自由に体験。
のぞく?ひたる?
聴き方はあなた次第。
電子音楽の世界を自由に体験!檜垣智也 監修のリスニングルーム開催。
今回も、新進気鋭のアーティストからアマチュアまで、幅広い作品をセレクト。 「電子音楽って何?どんな音楽?」と気軽にのぞいてみるのもよし、 気になる作品にじっくり耳を傾けるのもよし。
あなたらしいスタイルで、電子音楽の魅力を自由に楽しんでください。
Electronic Music Room
電子音楽の世界を自由に体験!檜垣智也 監修のリスニングルーム開催。
今回も、新進気鋭のアーティストからアマチュアまで、幅広い作品をセレクト。 「電子音楽って何?どんな音楽?」と気軽にのぞいてみるのもよし、 気になる作品にじっくり耳を傾けるのもよし。
あなたらしいスタイルで、電子音楽の魅力を自由に楽しんでください。
プログラム開始時間
1. フォリア / Folia|2010|4分59秒|ステレオ
ドン・キホーテが山中でひとり迷い、孤独のうちに狂気へ傾いていくー本作は、その場面に着想を得ている。「フォリア」はMotusによる共同プロジェクト「Temporada Utopica」の一作でもある。
2. Komorebi|2017|10分18秒|ステレオ
「Komorebi 木漏れ日」はフランス語にぴったり対応する語がない日本語である。木々のあいだから差し込む陽光が、林床の光と影とをたわむれさせる—そんな詩的な一瞬を指す。この音楽は、この音楽はその瞬間に触発されて生まれ、聴き手をその光景を見つめる側へとそっと導く。
3. 狂気の執念 Folles obsessions|2013|9分35秒|ステレオ
本作は、主としてDIYのアナログ・モジュラー・シンセサイザーで制作した音の多層的なレイヤーから構成されている。いま音素材の出自を明示したが、というのも私の音楽では珍しく、この素材そのものが作品の起点になっているからだ。粗削りで、いまここにあり、力強く存在感のある響きとして選んだ。それらによって執着したような反復(オブセッション)を作り出しながら、亀裂や断絶も組み込み、「クリア」と「おぼろげ」のあいだを揺れ動く世界を練り上げた。全体の雰囲気にはある種の快活さがあり、ときに狂気にも近いものを帯びている。
4. 地に横たわる石碑 Des Stèles(Couchées sur le sol)|2014|10分06秒|ステレオ
強迫観念に駆られるような行進—それが、この作品の「最初の感覚」であり、出発点となった。ここには、私の多くの作品で展開してきた「忘れ去られた儀式」というアイディアがあらためて立ち現れる。ただし今回は、いっそう暗い色調を帯びている。死や消滅の影は、いつもより露わだ。消えゆくものに抗して、ひそやかな闘いが始まり、音は安定へ、そして宙吊りの時間へと押し進められていく。また本作は、作家吉村昭の作品に基づく最初の作品でもある。しかし惹かれたのは、小説の物語そのものではなく、文体と作品全体から立ち上がる雰囲気である。
5. エアリエンヌ Aérienne|2022|8分24秒|ステレオ
この作品は、最近の音楽クリエーションの多くが、どこか重々しさをまとい、広いスペクトルや「ノイズ」、そして張り詰めた緊張感に向かいやすい—そんな実感から始まった。だから本作では、その反対側へ振ってみたかった。軽やかさのあり方を探り、明るく、光のある色彩で音を組み立てる。私たちがいま生きているあまりにも混乱した時代への、ひとつのコントラストとして。
6. 東/西 Est / Ouest|2026|15分00秒|4トラック(初演)
このアクースマティック作品は、笙(しょう)と中世のオルガネットの音を組み合わせたものである。どちらも「息」によって鳴る古い楽器だが、奏法の身振りや空間性においては大きく隔たっている。日本の口笙である笙は、宙づりのような和音をひろげる。一方、膝の上に載せて弾く西洋の小さなオルガンであるオルガネットは、ふいごの動きによって音を分け、パルスを生み出す。私は二人の奏者に、グラフィック・スコアを手がかりに、そこからモチーフや形態(モルフォロジー)を抽出してもらい、それらを音素材へと変換することを提案した。電子音響空間のなかで、これらの素材は変容していく。息はスペクトルを揺らし、パルスは引き伸ばされ、やがて掛留の感覚へと接続していく。遠く隔たった二つの伝統が、動きつづけるひとつの空気のなかで出会う。
謝辞| 笙の牛山泰良氏、オルガネットのオリヴィエ・カムラン氏 Olivier Camelin、そして招待してくださった檜垣智也氏に感謝します。
略歴|クラッシック音楽と作曲を学んだ後、現代音楽と電子音響音楽、アクースマテック/ミュージックコンクレートの分野で音と空間の表現の領域を広げ、音響システムの更なる可能性を探究している。アンサンブル(L’Instant donné、Court-Circuit)やオーケストラ(ONCEIM)と共同委嘱で作曲し、アクースモニウム演奏家として共演。即興演奏家、パフォーマーとしても活動し、国内外の様々な音楽家と共演している。芸術監督を務めるカンパニーMOTUSとパレ・ド・トウキョーの数年に渡るレジデンスでは、企画展に合わせた関連コンサートを主催。(当時、MOTUSのフランスメンバーだった檜垣智也氏とも共演。)グラン・パレのリチャード・セラ展やギメ東洋美術館内でアクースモニウムにより演奏される。芸術監督を務めるフェスティバルFUTURAでは、ミュージックコンクレート70周年を記念し、フェスティバルにプログラムした作曲家の作品をドローム県のクレの街に、リヨンビエンナーレの関連プロジェクトでは作曲した音の道を川沿いに、それぞれGPSと連動したアプリケーションによってアクースマテックの世界をフェスティバルのコンサート会場の外側に一般公開した。プロジェクト毎にLa muse en circuit(回路の詩神)やGRAME(フランス国立音楽創作センター)、INA-GRM(フランス音楽研究グループ)、ラジオフランス、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)などでスタジオレジデンスや共同制作を行う。舞台監督、詩人、俳優、オペラ歌手、ダンサー、視覚芸術など、他分野のアーティストと協働するトランスディシプリナリー(学際的・領域横断的)なプロジェクトも手がけている。
1. 森の精 / Spirit of the Forest
中島弘至 (NAKAJIMA koji)|2026|初演
川のせせらぎから楽曲は始まる。つづいて楽器かどうか不明な音楽が現れてくる。これはクラシックギターの曲を逆から演奏したものだ。前半はこうして森の入り口から迷い込む場面を描いている。鳥のさえずりに我に返ると、ドラム・ベース・女性の声の不思議な歌が聞こえてくる。これは「森の精」の歌でありfinaleで作曲した。後半は再びクラシックギターの逆演奏が流れ、カラスによってさらに森の奥へと招かれていく。
略歴|大阪芸術大学芸術学部(音楽学科・作曲専攻)卒業、大阪芸術大学 大学院前期課程 芸術制作専攻(作曲〔電子音楽〕研究領域)修了。「ボンクリ」(東京芸術劇場 2021年(記憶)・2022年(不穏なる世界)・2023年(遥かなる旅)に作品演奏)。電子音楽コンサート「電子音楽の調べ」(2023.3.26 岸和田市立自泉会館、作品演奏(予兆・微睡のなかの不安・侵略と逃避・不穏なる世界・未知の世界〔通りゃんせ〕)。
2. osmosis ~pa·ru·u·re·ra~ (Born Creative Edition)
坂野伊和男 (BANNO Iwao)|2026|初演
音高や音色の異なるいくつかの音をそれぞれ独立して規則的もしくは不規則的に繰り返して音列を生成した。これは過去の作品で既に試みているのだが,引き続き多様な音列を作れないか探ってみた。無作為や出現確率のコントロールによる音列とも絡めて,音が揺れて戯れているような,そんな感覚が感じられたら,などと考えながら音の流れを構成した。
略歴|1959年 愛知県生まれ。九州芸術工科大学 芸術工学部 音響設計学科 卒業。同大学院 修了。1986年 NHK日本放送協会入局。主にドラマ,音楽のミキシングに30数年間従事。ボンクリ「電子音楽の部屋」には2023年初参加。Festival Futura 2024出展。CCMCには公募も含め2012年から参加している。
3. Naktis / Night
向山千晴 (MUKAIYAMA Chiharu)|2026|初演
リトアニアから北海道帯広市へ来道された実験映像作家・詩人のジョナス・メカス。NYで活動しながらもソ連と故郷リトアニアの状況に胸を痛め、涙ぐんでいたという。提供された帯広滞在中の彼の声をもとに制作。今現在においても続く世界中の様々な苦難。暗闇の中、静かな抗議と平和への強い願いを込めて。
*メカスの声|1991年08月22日録音/ 鈴木順三郎氏による
略歴|1stAlbum「piano prizm」がBBC、RadioFrance、RAIで放送。香港Arts Centre 40周年公演ゲストライブ、ロンドンIKLECTIKの委嘱、ドイツNina Fisher & Maroan el Sani実験映画の音楽、国際舞踏フェスにて故 大野一雄氏の映像音楽。ACCグラント/中国・麗江レジデント・アーティスト。自作映画が国際ダンス映画祭公式プログラム選出など。
4. スーパーヒモサウンド#2 / Super HIMO Sound♯2
ミユ・タシマヤ (TASHIMAYA Miyu)|2026|初演
2022年に同企画の為に制作した曲のシリーズ第二弾。超ひも現象からインスピレーションを得、ヒモ状の物から出る音のみを使用して制作した。
略歴|大阪芸術大学音楽学科卒業。在学中に電子音響音楽の制作を始める。以降、ボンクリフェスティバルや電子音楽グループhirviのイベント等に参加。https://soundcloud.com/uudoooou
5. 鋏 / Scissors
RAKASU PROJECT.|2007|改定初演
鋏で紙を切る音を素材とした作品です。日常の行為から生まれるささやかな響きを重ね合わせ、独自のリズムとして構成しました。身近な音が反復し、重なり、変化していく過程は、聴く人それぞれの身体感覚や想像力を刺激することでしょう。日常の音が持つ豊かな表現の可能性を、自由な聴き方で体験してください。
略歴|広島県福山市生まれ、京都市在住。広島大学大学院学校教育研究科音楽教育修了。電子音響音楽などの実験的音楽制作、商業音楽制作、各種センサーを活用したパフォーマンスや、サウンドインスタレーション制作、即興演奏などを手がけている。現在、京都精華大学メディア表現学部教授。
6. 伊桑浦 / Isouura
石原遼太郎 (ISHIHARA Ryotaro)|2026|初演
微細表象(petite perception)として散在する感覚=記憶は、統覚(apperception)を通して、夢の系列(série)を組織する。本作は、そのような現実と非共可能(incompossible)な、ひとつの映画的現実、あるいは夢の系列の録音である。このある非共可能な系列の住むところ、「伊桑浦」はつねに、私たちの立ち入ることのない入江である。
略歴|神奈川県出身の音楽家。ジャズや現代音楽の影響を受けつつ、即興演奏や電子音響を取り入れた作品を制作・演奏している。サウンドインスタレーションや映画音楽、展示音楽などの制作も手掛ける。
7. 美しき陽炎 / Beautiful heat haze
城西孝吉 (JOSAI Kokichi)2026|初演
この作品は、「陽炎の揺らぎ」をそのまま音楽にするというテーマのもとに作曲しました。本来、陽炎が持つイメージは「はかないもの」といった少し暗いイメージを持ちますが、本作では陽炎の揺れる様子を音楽として美しく描きました。ゆらゆらと美しく揺れ動く音たちをゆっくりとご堪能ください。
略歴|10歳よりピアノ、12歳よりチューバ、20歳で作曲を始め、さまざまなコンクールに意欲的に参加している。その他、広島を中心に活動している「即興演奏会」のメンバーとしても活動中。ピアノを矢吹護、チューバを古本大志、作曲を牛山泰良の各師に師事。現在、エリザベト音楽大学管弦打楽器チューバ専攻4年在籍中。
8. いおろん / ioron
牛山泰良 (USHIYAMA Taira)|2026|初演
本作はあるとても強い思いを形にする為の儀式、その課程の断片です。この作品を聴く上で、注意事項があります。1つ、この音が聴こえたら目をつむってください。2つ、もし、ささやかれても返事をしないでください。3つ、聴いている時に誰かの顔が思い浮かんだら「いおろん、いおろん、いおろん」と心の中で呟いてください。4つ、体調に異常を感じたら速やかに退出してください。5つ、聴取は自己責任でお願いします。
略歴|長野県諏訪市出身。電子音楽家。サウンドエンジニア、エレクトロニクス奏者として参加したコンサートが佐治敬三賞や文化庁芸術祭音楽部門大賞などを受賞。自作においては電子音楽祭「Festival FUTURA」(フランス)等、国内外で多く上演されている。アクースマティックアート団体「hirvi」メンバー。電子音楽やアクースモニウムの啓蒙活動を行っている。伝統と前衛、音と空間を内包した創作を目指す。
9. 《夏八景》より「峠」 / “At the Pass” from Eight Summer Scenes
清水慶彦 (SHIMIZU Yoshi-hiko)|2025|改定初演
1930年、効果音を主役とした音響作品《夏八景》がNHKによってラジオ放送された。日本でのラジオ放送開始100周年にあたる昨年、川崎弘二氏の委嘱により、檜垣智也氏との共同制作として、この《夏八景》を現在の視座から再創造するプロジェクトが挙行された。本作は、ここで制作された新たな《夏八景》の第七景にあたるもので、フィールド・レコーディングにもとづくサウンドスケープ・コンポジションによる作品である。
略歴|作曲家/怪談作家。フィールド・レコーディングやサウンドスケープ・コンポジションに注力しつつ、ヴァナキュラーな怪異を求めて奇談・怪談の収集著述に勤しむ。作曲家として作品集CD『六相円融』(studio N.A.T)が『レコード芸術』誌推薦盤に選定。怪談作家(筆名|丸太町小川)として単著怪談集『大分怪談』(竹書房怪談文庫 2025年)、『実話拾遺うつせみ怪談』(竹書房怪談文庫 2023年)など。
10. スカワティの村 / Desa Sukawati
新美 術 (NIIMI Toru)|2026|初演
家から2kmほどのところに、Sukawati(サンスクリット語で浄土)という名の村がある。混沌と秩序、喧騒と静寂、刺激と癒しの入り混じった聖なる場所。そこでも人々のエネルギッシュな営みが日々行われている。都市生活のストレスを忘れて、ほんのひととき南の島の楽園に心を躍らせてみてはいかが。そこには、物事をさらりとかわして暮らす術と、安らぎが待っています。心に浮かぶ雑事をさらりと受け流して、心のデトックスと再充電を。
略歴|大阪芸術大学通信教育部音楽学科卒業。大学在学中電子音響音楽に出会い、その奥の深さを「限りない可能性」と捉え作品の創作を始める。年々枯れていく完成に抗いながら平安の地平を目指して奮闘中。真宗僧侶
11. 風 / wind
岩熊恵子 (IWAKUMA Keiko)|2023|改定初演
風鈴が聴ける観光地へ行った際、町の方からちょうど終戦記念日の黙祷アナウンスが聞こえてきた。終わった途端、風が吹いて一斉に風鈴が鳴った。その情景を音に表した。未だ世界は穏やかでもあり騒々しくもある。
略歴|福岡県出身。大学時代に電子音響音楽を学び、作品制作を続ける。現在特別支援教育に携わる。
12. Amorphous
天野 知亜紀(AMANO Chiaki)|2024|改定初演
過去の演奏やリハーサル時等に録音されたサクソフォンの音を使用している。全体のイメージとしては、サクソフォンの音を素材として一度溶かし再度成型するのだが、きちんと形にならない状態。絶えず変化するエネルギーを持つ不安定な状態が、温度や熱によって安定化(結晶化)しようとする構造を再現した。
略歴|音と映像、鑑賞者の相互作用を意識した複合的な表現によるサウンド・インスタレーション、作・編曲や、多次元立体音響のための楽曲を手掛ける。音楽家。ボンクリ・フェス、亀山トリエンナーレ、アンサンブル瀬戸内のメンバーとしてアート瀬戸内などに出品。
1. Free Music Machine - Prototype
池田拓実 (IKEDA Takumi)|2026|初演
過日AIに「お前は音楽を表現媒体とは思っていないだろう」(大意)と言われ、そういう言い方もあり得るかと思った。自分にとって音楽とは諸々の不自由から自由になるための手段である。昨年末から「プログラミングから自由になる」ためのツールを開発中だが、AIにコーディングさせる中で多発する齟齬に難渋している。本作はその火事場からの現状報告。表題は作曲家パーシー・グレインジャーが晩年に制作した自動演奏装置から。
略歴|他者/環境/時間と交渉するための媒体として、かつ自らの活動域を現実社会に定める手段として音楽/音に取り組む。既知の音楽史や演奏する身体の相対化に向けて、コンピュータプログラミングによる音楽制作や、演奏システムの探求/開発を行う。エレクトロニクスを伴う作品の他、合唱のための音楽、即興音楽家のための記譜作品、映画音楽等を手がける。木下正道・多井智紀との「電力音楽」、即興音楽家としても活動。
2. クジラの哀歌 / Élégie de baleines
成田和子 (NARITA Kazuko)|2026|初演
2025年に作曲した「クジラの歌 / Chant de baleines」の続編である。フランス国立海洋開発研究所 (Ifremer) の海洋研究者Hervé Glotinが録音した海洋のさまざまな音を素材としている。海洋汚染や気候変動、海洋交通の増加による被害を訴えるクジラの哀歌である。
略歴|1997年から電子音響音楽コンサートの開催に携わっている。電子音響音楽作品のほか、オペラ、管弦楽曲や室内楽、邦楽作品など多数の作品を作曲、内外で演奏されている。近作にハイブリッドオペラ「テセウス」(京都初演)、マルチメディア作品「DES ABYSSES AUX ÉTOILES - RÉCITS DES CONFINS」(ツーロン・パリ初演)におけるDES ABYSSES の電子音響/器楽パートの作曲がある。同志社女子大学学芸学部音楽学科特任教授。
3. 和歌ー習作 / Wakaーetude
渡辺 愛 (WATANABE Ai)|2026|初演
今から66年前に作曲家・外山道子は「Waka」というテープ作品をアメリカでリリースした。数年前から彼女の特異な経歴に惹かれている私は、彼女が作曲に用いた和歌をイメージソースに作曲してみることにした。「我が屋戸のいささ群竹ふく風の音のかそけきこの夕へかもー大伴家持」等々の歌をなぜ道子は選んだのかわからない。わからないなりに編んでみたのが本作だ。笙の音はカニササレアヤコさんによるもので、彼女の音は五七五七七より多くのことを語っているような気がした。
略歴|作曲・アクースモニウム演奏・即興活動を行う。東京音楽大学大学院修了後に渡仏、パリ国立地方音楽院を経て東京藝術大学大学院修了。リュック・フェラーリ研究で博士号取得。現在、昭和音楽大学、東京藝術大学、武蔵野美術大学、玉川大学非常勤講師。日本電子音楽協会理事。美学校講師。 JAPAN2011受賞(イタリア)・ICMC2018入選(韓国)、France Musique(フランス)・現代の音楽 (NHK)・RADIO SAKAMOTO(J-WAVE)での放送など、国内外で評価を得る。
4. 小さな島 / Small island
守谷悠吾(Yugo Moriya)|2026|初演
2024年10月1日 三重の海の上で見た、小さな島のための短い作品
略歴|2002年生まれ、神奈川県出身。電子音響音楽の作曲やハウリングの原理を利用し竹を素材にして製作したFeedback Organという自作楽器を使用し、ライブパフォーマンスを行う。2024年『落ちてゆく』がContemporary Computer Music Concert 2024 Motus賞を受賞、Festival FUTURA2024(フランス)にて上演。
5. 天馬行空の旅々 [ Ⅱ - Ⅳ - Ⅶ ] 4ch Ver. / Journeys of the Unbridled [Ⅱ - Ⅳ - Ⅶ ] 4ch Ver.
田代 啓希 (TASHIRO Hiroki)|2026|改定初演
《天馬行空の旅々》は「天馬行空」ないくつかの旅の様子をイメージして制作された電子音響音楽作品である。それぞれ1分から2分程度の小品で構成されており、軸となる音色や技法は小品ごとに異なっている。「天馬行空」は天馬が空を自由に駆け巡るように、何ものにも拘束されず自由奔放な様子を意味する言葉である。聴き手にはその旅路の情景を自由に想起してみてほしい。今回は3つの小品を抜粋し、4ch作品として上演する。
略歴|神戸市出身。電子音楽家、音響・映像技術者。電子音響音楽の作曲・演奏を主な活動フィールドとして創作を行うと同時に、音響・映像双方の知識と技術を活かして音響やコンサート撮影に従事するなど活動は多岐にわたる。これまでにCCMC、FESTIVALFUTURA、ボンクリ・フェスなど国内外で作品を上演。CCMC2019にてFUTURA賞、2020にてMOTUS賞を受賞。京都精華大学メディア表現学部非常勤講師。
6. 江ノ島のクラゲは鐘を鳴らすのか? / Do the jellyfish in Enoshima ring bells?
佐藤 亜矢子 (SATO Ayako)|2024
「クラゲの環世界ではいつも同じ鐘の音が鳴りひびき、それが生命のリズムを支配している」ユクスキュルによるこの描写は比喩であり、実際に海中でクラゲが鐘を鳴らすことはないだろう。しかし、私はその音楽的で美しい情景を想像し、鐘を聞くための調査を始め、作品をつくることにした。本作はその第二段階にあたる。
略歴|作曲家、アーティスト。主に電子音響音楽の領域で国内外にて活動。旅先や日常で出会う雑音・生活の音・物音などの録音物を素材とし、環境や場所の記憶を辿りつつ上書きするような作品を制作。ICMC、SMC、NYCEMFなどの国際学会・音楽祭で作品上演。2019年東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了。リュック・フェラーリの作品研究で博士(学術)。現在、静岡文化芸術大学デザイン学部デザイン学科講師。
7. Fragmentary Passage(undercurrent)
Molecule Plane|2026|初演
自身の心身の断絶を補完するために制作されるセルフメディケーション的な作品群『Fragmentary Passage』シリーズの最新作。「undercurrent(アンダーカレント)」とは底流、暗流、下層流という意味だが、これは何も水や空気の流れだけを指すものではなく、表層に出ていない暗黙的な思考や感情というニュアンスも含む。表向きは大丈夫そうに取り繕っていても、心では常に緊張感と共に自己を保つのに精一杯なのかもしれない。
略歴|京都府出身。大阪芸術大学で電子音響音楽の制作と演奏法を学び、同大学院博士(前期)課程を修了。現在はMolecule Plane名義を中心に、ユーロラックモジュラーをはじめとしたハードウェアのシンセサイザーや環境音などを用いた音楽制作やライブ活動を行っている。これまでに3枚のソロアルバムを発表。2022年の「電子音楽の部屋」ではメインコンポーザーの一人に選ばれた。https://linktr.ee/push_it_studio
8. Neutral
永松ゆか (NAGAMATSU Yuka)|2025|初演
「白」でも「黒」でもない、重力から解放された「零」の領域。本作『Neutral』は、あらゆる揺らぎが、均衡を保ちながら「今、ここ」という純粋な点に立つ瞬間を紡いでいる。
略歴|電子音響音楽を中心に、メディア、映像、空間、身体表現にまつわる音楽やサウンド、領域横断型プロジェクトの創作・研究・キュレーション活動をおこなう。相愛大学特任講師、帝塚山学院大学非常勤講師。
9. クサカイノラムキ / Kusaka Trail
岡田智則 (OKADA Tomonori)|2026|改定初演
山肌に刻まれた道を登り切った先で、空気は重さを変える。そこにあるのは、眠り続ける巨大な塚。人の手で築かれ、人の時間を呑み込んだ沈黙のかたまりだ。苔むした土は言葉を持たず、ただ長すぎる年月の圧だけを放っている。背後には嘆く人の闇気配。ここは終着ではない。生者と死者、現在と太古が交差する境界であり、足を踏み入れた者の覚悟を静かに問い返す場所である。
略歴|広島出身。サウンド・テクノロジーを用いて制作を行うサウンド・アーティスト。アクースモニウム奏者。「CCMC2017」Futura賞入賞。「Prix Presque Rien 2017」入選。「FESTIVAL FUTURA」をはじめ、国内外の音楽祭での作品上演多数。長久手市長賞受賞。電子音響音楽の演奏メソッドの研究にも取り組み、「第125回日本音楽学会中部支部定例研究会」や「先端芸術音楽創作学会」で研究報告を行っている。
10. 天文学_黄昏 / L’Astronome - Crépuscule
馬筠茹 (マ・ユンジュ MA Yun-Ju)|2023|
「音と光が、現代の街角の夕暮れ時の光と騒音に変わる。」この作品は、アントナン‧アルトー(Antonin Artaud)が未完のプロジェクト『天文学』の中で述べた記述に発想を得ています。ミュージック‧コンクレートがまだ生まれてない以前、1932年のアルトーによる音楽についての記述には、すでに「空間」の概念がありました。本楽章はアントナン・アルトーに捧げられている、グラモフォンの音は遊び心があり狂っているアルトーを象徴しており、彼が自分の居場所を見つけられない現代社会の街角を象徴しています。心が動いている限り、誰もが少しの狂気を持っていないだろうか?
略歴|台湾生まれ。作曲家・サウンドアーティスト。2014年より国内外で音楽活動を行ってました。記憶・身体感覚・環境音などを素材に、音が持つ非言語的な力を探求するとともに、パフォーミングアーツと電子音響音楽を結びつけ、人間の行動や関係性を研究する表現を行っています。2019年には、台湾の葬送・火葬文化を扱った作品により、国際電子音楽コンクール「PRESQUE RIEN 2019」で審査員特別賞を受賞しました。その後、Tokyo Born Creative Festival、フランスの Radio Campus Paris、フランス国立電子音楽祭、Les Estivales de Vanves、Chemins d’art en Armagnac、フランス国立音楽創作センター FF.XP、イタリア Sonic Explorations などの国際芸術祭で作品発表やアクースモニウム演奏を行ってきました。近年は、作曲だけでなく、学際的なプロジェクトの制作や音に関する創作活動にも取り組んでいます。2023年には、台北・国家両廳院で台湾初のアクースモニウム公演を実施するとともに、電子音楽創作およびサウンドアートのアトリエを開催し、ソルボンヌ大学で開催された国際音楽創作学術会議でも作品を発表しました。2025年には、欧州の RECTOVRSO XR 展にサウンドインスタレーション作品を制作し、台湾で財団や大学でサウンドアートに関する講演を行っています。国際的な交流と電子音響音楽および学際的創作の可能性を継続的に探っている。
11. 朝の詩 / Morning Poetry
隣人(Rinzin)|2026|初演
朝。それは多くの人間が活動を始める時間である。目覚めた人々は一日を始めるために家事を済ませたり、身支度を整えたり、社会に溶け込んだりしていく。今作品は三人それぞれに朝を描写し、表現した。あなたの朝は素敵なものだっただろうか。多くの人が少しでも幸せな朝を迎えることを祈りたい。
略歴|メンバーは東海大学教養学部芸術学科に所属する菅野伽琉、寺師麻結、小野咲耶の3名で構成され、2025年12月結成。2026年3月今作初作品。
12. A
髙松慶実(TAKAMATSU Yoshimi)|2026|改定初演
ピアノの8つのAの音よりそれぞれひとつずつ作成した音素材を用いた作品。夢中を彷徨う。
略歴|東海大学教養学部芸術学科在籍。

愛知県立芸術大学大学院修了。博士(芸術工学、九州大学)。フランス留学中に現代音楽の作曲とアクースモニウムの演奏で注目される。ボンクリでは1回目から電子音楽の部屋の監修を担当。ハーバード大学、ケルン大学、Futura音楽祭等で招待公演を行う。フランス国立視聴覚研究所音楽研究グループ、回路の詩神、高橋アキ等から委嘱をうける。3枚のソロCDをリリース。第5回国際リュック・フェラーリ・コンクール最高賞(2003)、第18回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品(2014)、大阪文化祭奨励賞(2022)など受賞、入選多数。東海大学准教授、大阪芸術大学大学院客員教授。
※やむを得ぬ事情により、内容が変更になる場合があります。
※ご来場前に当劇場WEBサイトの最新情報をご確認ください。
作曲家であり、音楽祭の芸術監督であり、作曲教授であり、さらには音楽グループの牽引役でもある ヴァンサン・ロブフさん。じつは私とはもう20年以上の付き合いで、 「戦友」と呼びたくなるような大切な仲間です。これまで何度も彼の作品をアクースモニウムで演奏してきましたが、 物静かな人柄そのままに、音で圧倒するのではなく、いつも繊細で、ひとつひとつの音のオブジェにそっと寄り添うような音楽を書き続けてきました。 人物像と作品世界がここまで自然に重なるタイプの作曲家は、そう多くありません。 今回、満を持して彼の作品をまとめてボンクリでご紹介できることは、私にとって大きな喜びです。 ぜひ耳を澄ませて、その静かな熱量を味わっていただけたらと思います。
もう一つの柱は「ショートショート」。5分以内の短い作品ばかりをぎゅっと集めて、 電子音楽の裾野の広さと、多様なクリエイティブのあり方との“出会い”をご用意しました。 プロ/アマチュア、世代、国籍を問わないプログラムで、特に、まだ広く知られていない 若い世代の作品を中心にお届けします。
耳を傾けるうちに、「自分もこんなふうに音で遊んでみたい」「ちょっとつくってみたくなった」と感じていただけたら、 それだけでこの部屋は大成功です。聴いて楽しむ、出会って楽しむ、そしていつか、つくってみたくなる── そんなきっかけが、ここで生まれればうれしいです。
文:檜垣智也